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佐藤 修一 准教授 : 重力波を捕まえる

イタリアの天文学者ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を夜空に向け,初めて宇宙を眺めたのが1609年末といわれています。この光による伝統的な天文学の幕開けから400年,近代天文学は様々な波長の「光」を用いて発展を遂げてきました。一方で全く新しい観測手段による宇宙の観測も始まろうとしています。アインシュタインがその相対性理論のなかで予言した「時空のさざなみ」、重力波(じゅうりょくは)です.たとえば巨大な質量を持つ天体同士が衝突・合体するとき、時空間の歪みが波動(重力波)として放射され、宇宙空間を光速度で伝わっていきます.重力波の最大の特徴は物質との相互作用が極端に弱いということです.それはつまり、重力波は遥か宇宙の果て(宇宙誕生のそのとき)の情報を地球まで運んでくれるというすばらしく魅力的な可能性があるということです.一方で相互作用が小さいということは検出が非常に難しいということも同時に意味します。例えるなら,太陽と地球の間の距離が水素原子1個の大きさだけ伸縮するような極わずかな変化を捉えようとするものです。この想像を絶するほど微かな宇宙のささやきを捉えようと、世界の研究者たちが凌ぎを削っています。

この研究室では「重力波を捕まえる」というテーマをバックグランドにして計測機器の要素技術に関わる基礎開発を行っています。重力波の観測は精密な長さの計測によります.レーザーを用いた干渉計による計測が精度を出せる方法として一般的に知られていますが、我々はこの技術を極限まで突き詰めることによって重力波に感度のある「超高感度レーザー干渉計」を開発しようとしています。プロジェクト全体の研究領域はレーザー光源、光学素子、光学系、機械系,真空系、材料系など多岐にわたりますが、ここでは主に光学系に軸をおいて、精密測定を実現する光学系の基礎開発を行っています。

重力波用のレーザー干渉計としては単純にはマイケルソン型を用いますが、観測実機のスケールは巨大です。地上設置型では腕の長さが数km、衛星を用いた宇宙干渉計では数1000kmの干渉計を構成する計画です。地上設置型の干渉計は世界に数例あって既に稼働しています。日本ではLCGT計画が今年からスタートし,岐阜県神岡(スーパーカミオカンデのサイトでもある)で建設が始まっています。腕のながさ3kmの干渉計を地下1000kmに設置します。宇宙干渉計計画はまだ世界にうち上がった例がありませんが、日本ではDECIGOという計画が衛星3機によって基線1000kmのレーザー干渉計を軌道上に構成します。2020年代の打ち上げを目指しています。ここで開発した計測機器がこれら実機に活かされて、いつの日か、宇宙の果てからの信号を捉えるときが来ることを心待ちにしています。

レーザー干渉計を用いた光学実験のようす