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堀端 康善 教授 : コンピュータと数値計算

コンピュータと数値計算

パソコンがテレビ並みに普及し,種々のアプリケーションソフトウェアが販売され,中学生から家庭の幼児に至るまでキーボードを手にする現在ではとかく忘れられがちになりますが,コンピュータが誕生したそもそもの動機は数値計算を高速に行うことにありました。数値計算とは,足し算・引き算・掛け算・割り算の四則計算を基本とする科学技術計算です。

世界最初のコンピュータは,1946年にアメリカで誕生したENIACです。18,800本の真空管を使用していました。

第2次世界大戦中,アメリカ陸軍には大砲の弾道計算を高速に計算したいという強いニーズがありました。弾道微分方程式を解き,発射された砲弾の軌跡(弾道)を計算することにより,大砲の命中率を高めたかったのです。ENIAC完成前に第2次世界大戦が終結したため、当初の目的は達成できませんでしたが、開発は続けられました。 ENIACは,当時の最高速の機械式リレー計算機の百倍の計算速度を持っていました。

以来,使用する素子を真空管→トランジスタ→IC→LSI→超LSIへと進化させ,飛躍的な高速化を遂げてきました。その歴史は数値計算の歴史と重なっています。

今日では,パソコンでさえENIACの一千万倍以上の計算速度を持っています。そして,さらなる高速化を目指して,米日中欧の4極によるスーパーコンピュータ(その時代の一般的なコンピュータより極めて高速なコンピュータ)開発競争がますます白熱化しています。スーパーコンピュータによる数値シミュレーション能力が国際競争力の源泉になっているからです。数値シミュレーションとは,物理現象などをコンピュータで数値的に模擬することです。大規模な数値計算が必要です。

日本では,文部科学省を中心に次世代スーパーコンピュータ「京(けい,英語名:K computer)」の開発が進められています。6月には中国を抜いて計算速度世界第1位となりました。そして,11月にはとうとう目標としていた毎秒一京回(京は一兆の一万倍)の計算速度を超えました。高速・高精度の数値シミュレーションに利用し,科学技術の飛躍的進展(たとえば,省エネ半導体の開発、ウィルス挙動解析で創薬)や気候変動(たとえば,地球温暖化)問題解決への貢献を目的としています。
ENIAC以来の65年の歴史の中で,同時代のコンピュータ群の中で抜きん出て超高速のコンピュータはいつの時代でも数値計算用のコンピュータでした。