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岡村 定矩 教授 : 天文学は宇宙の考古学

私の専門は天文学、なかでも銀河天文学・観測的宇宙論です。天文学者になろうと思ったのは高校2年生頃でした。私は本州の最西端の寒村に生まれました。生家は海岸から4 kmほど入った山の中にありました。少し高いところにあったので、南には遠くの北九州、西には響灘が望めていましたが、近くには人家の明かりは全く見えませんでした。そこで育ったので、幼少の頃から夜空には慣れ親しんできましたが、天文少年ではありませんでした。通っていた下関西高校の図書館で、ある日たまたまオリオン座の馬頭星雲の写真を見て、我が家からよく眺めていた、響灘に沈む夕日に照らされた雲とイメージが重なったのです。「こんな美しい景色が宇宙にもあるんだ。天文学者になろう。」そう思った瞬間でした。振り返ればもう40年近くも天文学の 研究に携わっています。
私が主な研究対象としている銀河は、太陽と同じように自ら光を放つ恒星が数億個から数千億個集まってできている巨大な天体です。天の川は私たちの太陽が属する銀河(銀河系)を内部から横向きに見た姿です。「原子は物質の基本構成要素」という言い方と同じ表現をすれば、「銀河は宇宙の基本構成要素」です。宇宙には約1千億個の銀河が散在しています。
宇宙空間は広大なので、光で旅しても莫大な時間がかかります。太陽から光が地球に届くまで8分19秒かかります。銀河系の中で太陽に最も近い恒星でも4.3年かかります。銀河系の外にある銀河では桁違いに長い時間がかかります。銀河系の「お隣さん」のアンドロメダ銀河でも約230万年もかかるのです(図1)。宇宙にある天体は、我々の目に届いた光がその天体を発した時点、すなわち過去の姿を見せているのです。

アンドロメダ銀河

図1 約230万年昔の姿を見せているアンドロメダ銀河(東京大学木曽観測所提供)

 

このように、遠い天体を観測すれば過去の宇宙の姿が見えるので、「天文学は宇宙の考古学」といっても良いでしょう。宇宙は今から約137億年昔に、超高温・高密度の1点から爆発的に誕生し(ビッグバン)、膨張を続けて現在に至っています。ビッグバン直後の宇宙には天体はありませんでしたが、膨張して温度と密度が下がる過程で、おそらくビッグバンから数百万年後に宇宙最初の星ができ、次に星々が集まって銀河ができ、宇宙は今日の姿になったのです。したがって、どんどん過去に遡って銀河を観測すれば、宇宙進化の歴史が見えるはずです。このような分野は観測的宇宙論と言われています。銀河の構造や性質と進化を調べる銀河天文学と観測的宇宙論は密接不可分です。
観測的宇宙論は近年飛躍的な進歩を遂げました。図2をご覧ください。これは横軸に西暦年を取り、縦軸に天体の距離をとって、その時点で知られていた最も遠い(過去の)銀河を示したものです。記号の違いは銀河の種類の違いですが、ここでは気にしないでください。縦軸の左目盛りは赤方偏移(z)という量ですが、右の目盛りにある、「現在から何億年昔か」という値の方が(少し不規則ですが)わかりやすいと思います。

知られていた宇宙最遠方の銀河

観測された宇宙最遠方銀河の変遷

 

私が修士課程を修了した時点では約50億年昔の銀河までしか見えていませんでした。しかし、2012年現在では約130億年昔の銀河も見えているのです(図3)。宇宙の過去がどんどん見えてきていることが分かります。私が大学や大学院で教わったことの半分くらいは「化石」のようになってしまいました。しかし、この激動の中に身をおくことができたのは、研究者としてとても幸せでしたし、今後も新しい発見に興奮することがあるに違いありません。

宇宙最遠方の銀河GN-108036

2012年4月時点で確認されている宇宙最遠方の銀河GN-108036。129.1 億年昔の姿を見せている。日本の研究者を中心とする国際研究グループが2011年12月に発見した。 (写真は国立天文台提供)

創生科学科は「理系ジェネラリスト」の育成を目指す新しい学科です。1期生、2期生の皆さんはこの学科の将来を担っています。「科学のみちすじ」をしっかり身につければ、今後どのような分野に行っても、自ら課題を設定し、それを解決してゆくことができるようになります。私はこの4月に着任したばかりですが、天文学をベースとして、学生の皆さんとともに、この新しい学科の骨格作りに参加できることをとてもうれしく思っています。教職科目では望遠鏡を使った実習も計画しています。

岡村 定矩