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鈴木 郁 教授 : 人間工学は創生科学科的各種手法の活用の場 #1

私の専門である人間工学に関連した、当研究室での研究例について述べる前に、自己紹介を兼ねて経歴等について述べさせて頂きたいと思います。次に、近年の研究や教育の一部を紹介させて頂きます。

電気が大好きな少年の行く末は…

当時、小金井第三小学校に通っていた私は、漫然と「将来は大学の工学部に進学したい」と思っておりました。電子工作キット(当時は真空管を使用した物もありました)を組み立てたり、法政大学の「小金井祭」で電気関係の展示を見たりしたものでした。「椅子に座ると男性か女性かを判別する」という展示を見て、「えらく素朴な仕掛けだな」と思った記憶があります。勿論、当時小学生の私には、流石に口にできませんでしたが。「小金井祭」といえばもう一つ、よく記憶に残っているのが、屋台で綿飴を買って食べた事です。まず小さいのを渡してくれて、「これ食べながら待ってろよー、大きいのを作ってあげるから」と言われたのを覚えています。何せ小学生ですから、綿飴一つで「ここ(法政大学)は良い所かもしれない」と思ったのは事実です。
時は流れ、私はある大学の工学部生になりましたが、成績の都合から第一希望の電気工学科には入れませんでした。付属高校生の頃より、黎明期であったマイコン(マイクロプロセッサ)を使った計算機を作ろうとしていましたので、計算機関係にも強かった管理工学科に進みました。人間工学には、同学科の専門教育科目の一つとして出会いました。身近な疑問に適切な解釈や理由付けをしてくれるこの学問に、深く惹かれることとなりました。電子回路や計算機の技術を、実験装置の製作等に生かせることも、魅力でした。

計算機の本体

大学生の時に作った計算機の本体

計算機の仕事で大学院の学費を稼いだりしつつ、ようやく人間工学の一部としての聴覚系の研究で、学位を手にするに至りました。大学院生の時代には、ある種のアナログ電子回路の振る舞いと、外乱を加えられたヒトの重心(正確には床反力作用点)動揺の類似性に気付き、それを契機にアナログ電子回路や微分方程式などについての理解が進み、これらは今日の自分の基礎の一部となっています。主に計算機関係を教える前職を経て、法政大学工学部の経営工学科に、人間工学や計算機の科目を担当する教員として勤めるようになり、その後の学科再編を経て今日に至っています。

創生科学科では、知能系の所属である一方で、物理(エレクトロニクス)実験の担当でもあります。知能系とは、大まかに言えば計算機関係だと理解して頂けると思います。方や、少年の頃からの電気好きが高じて、その種の実験も担当しています。ひょっとして、人間工学はどこへ行ったやら、と思われる方がおられるかもしれません。しかし物理学の知識や思考方法、一方で計算機の応用技術、さらに創生科学科らしいシステム的な思考方法は、他所では真似のしにくい独創的な人間工学関連研究に役立っています。

鈴木 郁