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塩谷 勇 教授 : なまけものの性能が上がる

人は自分の意思に従って次に何をするかを決めている。一人ならばよいが、複数の人が互いに影響する状況にあると、協力して大きな事をしたり、またはケンカなどのように自分の意思通りに行動できない状況が生じる。自分の意志に従って行動する人や物などは自律エージェントと呼ばれる。エージェントが互いに影響しあう状況にあるときには、奇妙な状況が生じる。この分野の研究で有名は研究者の一人に、「more is different」の言葉で有名なノーベル賞を受賞したアンダーソンがいる。量によって質が変わるということらしい。私も最近、これに関係した研究を始めて2か月が過ぎた。私の分野研究ではマルチエージェントと呼んでいる。複雑系と呼ぶ場合もある。

これまで、複数のエージェントが多量の情報を共有すると安定しない(争いが起きる)、少なくても安定しなくて、適度な情報をみんなが共有すると安定する(争いが少ない)ことが知られていた。すなわち、マルチエージェントの環境では、情報の量は中庸がより安定する。

私の研究結果ではさらに、それぞれのエージェントが適度な努力で自分なりの目標に向かって行動をすると、より安定する。その目標は過去の目標と無関係でよく、みんなが同じ目標でなくてもよい。努力をし過ぎても、努力をしなくても安定しない。この結果を乱拓アルゴリズム(randomized algorithm)と呼ばれる手法に適用すると、仕事をいいかげんにしている人の性能を上げることができる。3つのエージェントのときに、10パーセント程度、性能が上がる。
うれしいのか、悲しいのか。人間社会ならば。自己主張をしすぎると争いが、しないのも争いが起こると解釈できる従来の研究に加えて、各人がある程度の努力をすればさらに争いも少なくなる。また、全体の性能も上がる。