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玉井 哲雄 教授 : 近著の紹介
スマートフォンの技術と社会
先日、筑波大学付属駒場中学校の2年生6人が,私に取材を求めてきたので会いました。 学校の校外学習の一環として,グループに分かれてさまざまなテーマを選んで調査し発表するという活動のために、面会を依頼してきたものです。取材趣旨としては,「現在の世の中におけるスマートフォンの役割や、スマートフォンの安全性、システムの進化などについて、情報工学の専門家に御伺いしたいと思います。」と書いてきています。
私は2012年3月まで東京大学に所属し駒場キャンパスに勤務していたので、東京大学駒場の広報を通して取材依頼をしてきたのですが,とくに私を対象としたのは、2012年1月に岩波から出した「ソフトウェア社会のゆくえ」という本を、この調査テーマとの関係で調べて読んだからということでした。この本は、私としては初めて出した縦書きの一般読者向けのもので、それを中学生が読んでくれていたことは、感激でした。
本の狙いは、ソフトウェアがこれだけ社会の基盤を構成しているのに、それが抽象的で眼に見えないものであるために、普通の人々の関心が薄く、それがどのようなものでどのように作られているかという知識も低い、という状況から、そのギャップを少しでも埋めたい、というものでした。それだけに、これからの日本を担っていく中学生が関心をもってくれたことには、わが意を得たりという気持ちが湧きました。
中学2年生のインタビュアーたちはまだまだ可愛いですが、その質問はなかなか鋭く、私の本を事前に読み込んでいることがよく分かりました、スマートフォンの話題に入る前に,本のテーマに沿って,日本はソフトウェア市場で今後どのように存在感を示せるかとか、米国の強みは何か,などソフトウェア一般について質問がありました、スマートフォンに関しては、過剰な情報量にどう対処すべきかとか,サイバーテロや個人情報の流出というリスクが増すのではないか、といったまっとうな質問が用意されていました。
「ソフトウェア社会のゆくえ」では、情報システム・トラブルが起こす社会的な影響,ソフトウェアの権利保護,情報産業の現状と課題などを取り扱っていますが、創生科学科の授業として担当予定の「知能と社会」でも、これらの話題を取り上げていくつもりです。